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第361話 それだけは譲れない

Author: Sunny
last update publish date: 2026-09-06 23:34:26

沈黙が続いた。

隼人くんの表情は。

まだ読めなかった。

怒っているのか。

傷ついたのか。

それとも。

何かを決めたのか。

ただ。

グラスの脚へ添えていた指だけが。

ほんの少し強くなった。

「選択肢って」

やがて。

静かな声が落ちる。

「他の男との縁談を受ける選択肢の話?」

「それは」

「綾香ちゃん」

名前を呼ばれた。

いつもの柔らかな声ではなかった。

低くて。

静かで。

その先を遮るような響きだった。

「普段は」

隼人くんが言う。

「綾香ちゃんの選択肢、尊重するよ」

「今日ここに来てもらったのも」

一度。

私の目を見る。

「綾香ちゃんの意思だったからだし」

「何かする時も」

声は落ち着いている。

「綾香ちゃんが嫌なことはしたくない」

「それは、これからも変わらない」

そこで。

隼人くんの目が。

少しだけ細くなった。

「でも」

空気が変わる。

「綾香ちゃんが、他の男を選ぶかもしれないっていう選択肢だけは」

少しの迷いもなく。

言い切った。

「これからも消すよ」

息が止まった。

「綾香ちゃんの意見を聞かずに」

声は静かだった。

「必要なら、何回でも」

あまりにも身勝手で。

あまりにも。

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